【映画レビュー】細田守監督の描く「母の強さ」と「選択」。『おおかみこどもの雨と雪』の感想を書きます。

【映画レビュー】細田守監督の描く「母の強さ」と「選択」。『おおかみこどもの雨と雪』の感想を書きます。

こんにちは、なるけんです。

 

アニメ映画といえば、スタジオジブリ、ディズニー、新海誠監督…。
他にビックタイトルであるドラえもんや名探偵コナン、アンパンマンやワンピース…。
もう、あげ始めるとキリがないですよね。

映画はちょこちょこ観に行っているのですが、実写映画よりもアニメ映画を好んで観ています。
実写では表現できない世界も描くことができて、より自由な気がしまして。

自宅で過ごす時間が増えたのでこの機に色々観ていこうと企んでおります。
せっかくだから特にオススメのものはこのブログでも共有していこうと思っています。

 

今日紹介するのは、細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』。

賛否両論あるこの作品ですが、僕は心が動きっぱなしで感動しかありませんでした。
ハッピーエンドとかバッドエンドなんて軽く言い表すことのできないラストに、しばらく打ちのめされた毎日を送っていたことを思い出しました。

まだ観たことのない人にもぜひ観てもらいたいのでどんな話かまとめていきます。
※若干のネタバレがあります!ご注意を!

 

僕の世代にとって細田守監督は伝説である。

ちなみに、余談なのですが、僕は『細田守監督』にはとてつもない思い入れがありますです、はい。

僕のような平成生まれの青春を語るには『デジモンアドベンチャー』『おジャ魔女どれみ』は欠かすことができません。
愛媛では日曜の朝の6時からデジモンはスタートします。
早起きがとてつもなく苦手なワシですが、日曜日だけはしっかり目覚めていましたw

幼少期食い入るように観てきたこれらの作品にも細田守監督が関わられているものがあります。

デジモンにおいては劇場版の『僕らのウォーゲーム』
もう何回見返したか分からない!
40分くらいの短編映画なのですが、無駄のない展開&スピード感&目の離せないストーリー!
デジモン好きの世代にとっては同じく細田監督の『サマーウォーズ』はちょっとしたデジャブ作品として楽しむこともできます。

“なるけん”

「島根にだってパソコンくらいあるだろ」って島根をちょいディスってるのもよき思い出。

おジャ魔女どれみは映画でなくアニメの中のとある1話でした。
どれみが魔女を辞めた魔女と出会うお話でして。
最後に、どれみが結構大きな決断をするのですが、そんな演出するなんて…と子供ながらに驚かされました。

いつものポップな日常とは打って変わってグレーがかった異質な30分。
止まっているようで動き続ける『ガラス』をいろんな形で表現していた記憶があります。
明らかにこれまでの物語と違う空気感で、子供むけアニメと思えない仕上がりに全く目が離せなかったのを覚えています。

 

何が言いたいかというと、とにかく細田守監督作品の大ファンなんですってことですw
我々平成世代に深く刻まれている作品に多く関わられているからこそ、毎回新作を見るのは本当に楽しみで仕方のないものです。

 

どんな話かと言うと。

大学生の『花』は1人のオオカミ男と出会い、恋に落ちる。
一緒に暮らし始めた二人は新しい命を授かった。

雪の日に生まれた姉は『雪』
雨の日に生まれた弟は『雨』と名付けられた。

活発な姉と臆病な弟。
側から見ると普通の4人家族なのだが、2人の子供は人間とオオカミの側面を併せ持つ『オオカミ子供』だった。

そのことを隠しながらひっそりと暮らしていたのだが、ずっと続くと思っていた日常。
それは、父であるオオカミ男の死によって突然奪われてしまう…。
『2人をちゃんと育てる』と心に誓い、田舎の古民家へ移り住んでオオカミ子供の2人を育てていく。

ボロボロの古民家を少しづつ復旧させていったり、
近隣の人たちにも助けられつつ農作物を育てて行ったり、
子供たちを学校に通わせたり。

少しずつ周囲に溶け込んでいく中で、成長した2人のオオカミ子供が自分の生き方をどのように選択していくのか…ってお話です。

 

心が動いた場面。

ファミリー向け映画で『死』を描く。

2人のオオカミ子供の父である『彼』、物語序盤で亡くなってしまいます。
死因も分からず、オオカミの姿で亡くなったので、葬儀もなくごみ収集車で回収されるという強烈な最後でした。

『ファミリー向け映画でこんなにハッキリと「死」を描くんだ…』と驚きましたね。

ファミリー向け映画ではなかなか描かれるのことのない場面。
誰の人生にも終わりがあって、それは今日にも明日にも突然やってくるかもしれない。
それを見る側に感じさせるには十分すぎる描写でした。

 

子供の成長を『教室』で描く。

この物語はオオカミ子供の2人が幼稚園児くらいの幼い時間が半分、小学生まで成長した時間が半分くらいで描かれています。
幼稚園児年代から小学生年代までの成長は劇中で『ほんの1分ちょい』で描かれています。

その瞬間を描くために使われているのが『教室』です。

進学すると右から左の教室に移っていく。
その過程の中で
2人の容姿の成長も、
雪が友人に馴染んで人間味を帯びていくのも、
雨が周りに馴染めずに孤立していくのも、全部描ききっている。

そんな斬新な『時間の流れの描き方』があったのかと驚きましたね。

 

韮崎さんという不器用なおじいちゃん。

田舎の古民家に移り住んでからたくさんのご近所さんが登場します。
「田舎暮らしがしたい」と軽はずみな気持ちで移り住んできて、すぐに音を上げてしまう人これまではが多かったらしく。
「今度の入居者はどのくらいもつか…」みたいな目線でした、最初はね。

それが花の健気で一生懸命な姿勢を見て徐々に周りも関わっていこうとし始めていきます。

その中でも強烈だった人物が「韮崎さん(にらざき)」というおじいちゃん。
不動産屋にも心配されるほど、めっちゃ不器用で高圧的な物言いしかできない。
だけど、実は誰よりも新しく住み始めた人のことを想っている。

花に対してもすごく厳しく当たるんだけど、ジャガイモの育てる畑作りを助言してくれたり種芋を分けてくれたりしてて。
本人に対しては厳しいんだけど、家では「花ちゃん」「花ちゃん」と可愛くて仕方ないんだとか。

 

もうね、成平家のおじいちゃんに重なって仕方なかったんですよねw
ぶっきらぼうなんだけど、リュックとかカバンとかジュースとかお菓子とか色々孫に買ってきてくれるところとか。
ぱっと見ると「怒ってんの?」と思うものの、実は孫が大好きなんだってところとか。

「身近にこんな人いるよね!」ってついつい思っちゃう憎めない存在。
こういう人がいるからこそ、見ている人が一層物語に引き込まれていくんだろうなって思いました。

 

子供の成長は予想がつかない。

幼い頃の姉の雪はとても活発、蛇でも素手で掴むような女の子でした。
それが、成長すると周りの女の子の友達とも馴染めるようどんどん大人しくなっていきます。

弟の雨は逆にとても臆病、狩りをするのも苦手な男の子でした。
それが、狐の師匠と出会うことで森の中でたくましく生きていく力を身につけていきます。

野性味と人間味、2人とも劇中でひっくり返ります。
そのぐらい、『子供の成長』というものは極端で予想のつかないものなのだと感じました。

 

価値観を受け入れて見守ることの苦しさ。

最後、雨はオオカミとして生きていくことを選びます。
花は雨を連れ戻そうとし追いかけるものの、雨は目の前で森の中へ消えていきます。

「まだ何もあなたにできていない…」
「私が守ってあげないと…」
って思っていたけども、力強く崖の上で咆哮するする姿を見て全てを受け入れる花。

もう見ていて苦しかったですね。
「…しっかり生きて。」と言う花の言葉にめちゃくちゃウルッときました。

「私がなんとかしなきゃ」と思っていたのに、気がつくと自分の力で歩いて行ってる。
背中を押してあげないとと思うんだけど、価値観を受け入れて見守るのはこんなに苦しくて難しいことなのか。
この場面で強烈にそう思いました。
やりたいことをずっとやらせてくれていた両親へのありがたさすら感じましたね。

 

全て雪の目線の物語。

途中で気が付いたのですが、このお話は花が主人公として描いているものの、話し手は雪なんです。
「この時は〇〇と思ったと言っていた」みたいに花の心情を雪が話します。

花が感じたことや苦しんだことは、子供に伝えられる言葉くらいの情報量しか語られていません。
だからこそ、花が感じたことの大部分は観ている人のイメージに委ねられます。

1人で子供2人を育てると決めた時の不安も、
雪原を家族で走り回った楽しさも、
活発な雪を制御できない苦悩も、
雨が溺れた時の凍りつくような心配も、
森に雨を見送る時の寂しさも。

「こう感じた。」と明言しないからこそ、誰もが親の目線で追体験してしまえる。
語り手を花でなく雪にしたのは、観ている人が花の気持ちに重なりやすくするためかなって思いました。

 

『分かれ道』を描き続けた集大成。

細田守監督作品を観まくってきた僕が感じるのは、作中に『分かれ道』の描写が多いってことです。

上記のデジモンやおジャ魔女どれみの中でも描かれています。
特にわかりやすいのは『時をかける少女』かな?

実際に枝分かれになっている『道路』を描いている場面が多かったのですが…
今回の作品では『人間として生きることを決めた雪』と『オオカミとして生きていくことを決めた雨』という2人の子供の選択を通して【分かれ道】を描ききっている印象でした。

人生は小さな選択の上に成り立っている。
今の場所まで歩いてくるために、たくさんの分かれ道にぶつかってどちらに進むかを決めてきた。
周りに流されるのでなく、生き方は自分で決められる。

そんなことを観終わって感じました。

『母の強さ』と『選択』の物語。

『オオカミ子供』を育てたことがある人はいるでしょうか?
いないですよね。
だからこそ、どんな風に成長していくかが全くわからない。

初めての子育ての時もきっと同じですよね。

熱を出したらどんな風に対処したらいいんだろう。
食べたものを戻してしまった時はどこの病院に連れていったらいいんだろう。
同級生とトラブルがあった時は親はどこまで関わるべきなんだろう。
思いもしなかった道を子供が歩もうとした時、どうしてあげるのがいいんだろう。

悩みながら1つずつ経験して親は強くなっていく。
『オオカミ子供を育てる』という誰も経験したことのない話の中で、誰もが初めて子育てを体験した親の気持ちになれる。
そんな作品でした。

 

雨が川に溺れてしまった時のように、きっと親は子供が何をするのも心配なんだと思うんです。
僕の場合だってきっとそうだったのでしょう。
やりたいことがどんどん変わって、家から遠く離れた地で活動しているのを見守ることしかできないですから。

反抗期もあって「うっとおしい」なんて思った時期もあったけれど、やりたいことに対して背中を押してくれる親のありがたみを今なら感じることができます。
きっと、僕が親になった時に一緒に子供と観る作品の1つになるでしょう。
親にしてもらったように、子供にも自分の進みたい道に進ませてあげられるようにしたいものです。

 

細田守監督の描く『母の強さ』と『選択』の物語。
ぜひ、家族で過ごす時間が増えた今こそ観かえしてみましょう。

 

今日も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

またねー。

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